お笑い芸人の『鉄拳』さんによるパラパラ漫画の新作。
男女の青春期から晩年までの生きざまを描いたヒューマンドラマで、短いながら人間味のある感動作に仕上がっています。
芸人の中では絵のうまいことで知られている彼ですが、そんな小さな枠を遙かに超える才能の大きさを感じさせる作品で、流れる時間を振り子の動きのたとえて振り子ごしに展開する世界を切り取っていくというクリエイティブなアイデアは素晴らしいものがあります。
とくに後半、男が死にあらがうように振り子を必死で止めようとする姿は、怒濤の感動が押し寄せるこの作品のクライマックスです。
“芸人の作ったうまいパラパラ漫画”、というだけの深夜のTV番組用の一発ネタで終わらせてしまうにはあまりにも惜しい作品で、本人或いは周りの関係者がメディア作品としてちゃんとした形で然るべきところで公開すれば、もっと多くの評価を受けるのではないかと思うのですが。
私はこれを見たとき図らずも『岸辺のふたり』という作品を思い出してしまいました。
もちろんこの『振り子』がアカデミー賞級の作品とまでは思わないまでも、多くの人に感動を与えうる作品であることは間違いありません。
昨今の世界的な動画ブームやアートアニメーションの現状に明るい人物が鉄拳さんの周りにいるならば、この先彼にとって新たな展望が待っているかもしれませんが、もしそでないならとても不幸なことだと思います。
むしろ『鉄拳』という名前を出して“イロモノ”扱いされるより、実名でVimeoあたりにアニメーターとして投稿した方が、アーティストとして適正な評価を得ることができたのではないか、と思ってしまうぐらいです。
鉄拳がこんなに才能あふれる方だったとは驚きです。彼にはクリエイターとして成功してもらいたい。
おっしゃる通り、これは一つの普遍性のある作品としてもっと多くの人に観てもらうべきもの。
彼はテレビの出演料だけではなく、作品に対する評価としての報酬を受けるべきです。